■第二部

そしていつか、祝福されたPlayOnlineに、
大いなる災いが満ちようとしていた。

罪なきものがリストラされ、
世界は諦めと
絶望におおわれるだろう。



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内藤爺さん(72)


 タナーカ・ジラート君


 タナーカ・プロマシアちゃん




こんな感じでまたひとつヨロシク。(だから何を?)


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■こんなところにPlayOnline





内藤爺:
「これを見てもらえば分かるように、イレブンさんより先に
PlayOnlineは形になってきていたのじゃ」



ジラート:10ではどうする予定だったの?」




内藤爺:主に攻略情報の提供を考えていたらしい、例えば・・・」









内藤爺:「こんな感じでな」


プロマシア:「他にも何か出来そうね」


内藤爺:
「攻略情報だけでなく、追加クエスト・アイテム等をダウンロードしてPlayOnlineユーザー
だけのアドバンテージがあるようにしたかった
んじゃろうが・・・・・・」


ジラート:「間に合わなかった・・・・・・?」


内藤爺:「まぁ全体的な仕様が固まらなかったんではないかのう?」


プロマシア:「まだ10の時代では早すぎたのね。早い段階で削除されてたわね」


内藤爺:「そう。知っての通り、オフライン専用となった。」




■壮大なるPlayOnlineの世界


プロマシア:「壮大なる・・・って、イレブン母さんに会うためだけの手段じゃないの?」


ジラート:「僕聞いた事あるよ!本当はもっとスゴイ物になるはずだった、って」


内藤爺:
「ほうほう、よく知っておるのぅ。確かにPlayOnlineはお前達がいま目にしているものより
もっと壮大な物になるはずだったんじゃ」





*初期イメージ



ジラート:「これは・・・?」




*インターネットも利用可能


プロマシア:「これって・・・『PlayOnline』なの?」


内藤爺:「あぁそうじゃ。これはあくまでもイメージじゃがな」


内藤爺:「SQUAREはeコマース・eディストリビューションに参入しようとしていたんじゃ」


ジラート:「eコマース?eディストリビューション?」


プロマシア:
「ネット上で商品を買うように出来たり、音楽とか、漫画とかを多くの人に
配布することができる仕組みよ」


内藤爺:
「そう。『Manga』というファイルを、PlayOnlineビュワーをヴァージョンアップすると時々目にするじゃろう。
あれはその時の名残じゃな」



内藤爺:
「漫画では、SQUAREは集英社と手を組んでいた。
ジャンプ等をPlayOnline上で買って見れるようにしたり、そんな感じのことを考えていたんじゃろう。
ストーリをユーザーによって分岐させたり、インタラクティブな物も考えていたようじゃ」



*ヒカ碁


内藤爺:「また音楽の面でも、あのavexと組んで音楽配信を計画していたらしい」





*MUSICチャネル



内藤爺:
「SQUARE製品の流通を担っていたデジキューブは、
ゲームだけでなく様々な商品を扱おうとしていたようじゃぞ」




*PS2上で商品を購入する事が可能に



内藤爺:
「この他にも、スポーツ速報を利用しそのデータをゲームに活用する、といったものまで考えていたらしいのう」




*初期のPlayOnline公式は『Sports』というコンテンツがあった


ジラート:
「野球で言えば・・・昨日の試合の選手データを使って、自分が操れる・・・とか?」




内藤爺:
「野球に限らず、きっとそんな感じじゃろう。またFF10初期イメージのような使い方もあるじゃろうな。
PlayOnlineは実に夢のある物になったじゃろう」




*2000年の頃のPlayOnline公式


プロマシア:「でも、なんで今のような姿になったの?」



内藤爺:「それは・・・・・・。」





■夢、幻のごとく


内藤爺:「ここでちょっと年表を見てみよう」


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2000年01月:PlayOnline構想が発表される


2000年11月:サービス開始時期延期が決定。2001年夏から2002年春に変更

同:集英社との子会社を設立すると発表



2001年06月:スクウェア・エニックス・ナムコの三社が共同で
PlayOnline運営会社を設立すると発表



2001年07月:FF10発売。PlayOnlineのデモ映像等が入ったディスクが添付される。
FF11製品版スタートが2002年3月に。


2001年07月-09月 北米・日本で映画ファイナルファンタジーが公開


2001年11月:過去最大の赤字となることを発表。集英社との提携を解消。
PlayOnline事業計画を全面的に見直し。映画事業撤退・リストラ地獄へ。



2002年02月:最終発売日決定


※avexとの提携解消、三社体制の崩壊時期は不明

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内藤爺:「壮大なストーリーで始まったPlayOnlineじゃが・・・」


プロマシア:発表から2年経たずに全て無かった事になったのね・・・」


ジラート:「やっぱり・・・・・・アノ映画のせいなの?」


内藤爺:
「たしかに映画『ファイナルファンタジー』の失敗で傾いたのは事実じゃ。
何せ制作費がかかりすぎた。
160億円というのはロードオブザリング1本半分じゃからのう。
そして興行収入を計算すると99億円赤字が出たといわれておる。

ワシも『かぶきちょう』で見たが・・・公開2週目だったにもかかわらず、客が2-3割だったのが
印象的じゃった。その翌週に打ち切られたわ



プロマシア:
「製作したスタジオはハワイにあったのよね?
ハワイ州の知事さんが『ファイナルファンタジーデイ』って記念日を作ろうとしていた
のは、
どうなったのかしら?」


内藤爺:
「それは・・・・・・触れてはならん!
スクウェアピクチャーズは映画『ファイナルファンタジー』と、
アニマトリックス内の『Final Flight of the Osiris(ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス)』
の二作品を作って、
スタジオごとスクウェアピクチャーズは解散したんじゃからな。」
(公式Webも消滅)



内藤爺:
「PlayOnlineがアレ・・・になったのは
もちろん映画のせいだけではなく、事業として見通しが立たなかったんじゃろうな。
音楽配信は2004年の今でもまだまだメジャーとは言えんし、
様々な物品販売を計画していたデジキューブも既に危ない状態に差し掛かっていた。
あえてプレステでやる必要は?と考えると唸ってしまう。

・・・PlayOnlineには・・・力が無かったんじゃ・・・」


ジラート:「腐ってやがる・・・早すぎたんだッ!!・・・・・・ってこと?」


内藤爺:
「そうじゃな。そして不幸な時に赤字になったもんじゃ。
危ないファンタジーができなくなってしまったわけじゃな・・・
企業イメージも悪くなってしまったからのう・・・」



ジラート:
「攻略情報もほとんどないし、PlayOnlineと連携するゲームもないし、
つるっと2も終わっちゃった。もう何も残ってないんだね・・・・・・」



内藤爺:
「PlayOnlineβのプロデューサーだった松野氏(FF12プロデューサー)は
さぞかし残念に思ったじゃないかのう・・・。
しかし、これでよかったんじゃ・・・これで・・・・・・」


プロマシア:「まさに『FINAL FANTASY』ね!」



内藤爺・ジラート・・・・・・。





■忘れないで、私たちの事


内藤爺:「まぁワシの話ばっかりじゃヒマじゃろうから、絵でも見せようかのう」





*2001年夏時点でのPlayOnlineイメージ



ジラート:「うわー今とかなり違うんだね」


内藤爺:
「見ての通り、漫画やショッピングという項目があるじゃろう?
この段階(2001年夏)ではまだやる気だったんじゃな」


プロマシア:
「でも『音楽』の項目が無いわね・・・・・・avexはどこへいったの?『スポーツ』も無くなっているわ」


内藤爺:「それも触れてはイカンところじゃ」





*メモリーカードにデータを


ジラート:「メモリーカードにマクロとか保存できたらいいのにね!」




*漫画


プロマシア:漫画は本当にやる気だったみたいね」





*攻略情報(例はFF9)


内藤爺:「攻略情報は・・・・・・アルタナ大全を見る限りでは、やらないで正解だったみたいじゃの」





*携帯からのアクセス



内藤爺:
携帯からのアプローチは今冬(2004年冬)?に何か考えているようじゃ。
しかし既に発売から2年経っているわけじゃがの。

あとゲーセンからのアクセスも考えていたようじゃが、
こちらは完全に聞かなくなってしまったのう」




内藤爺:「・・・そうじゃ!『みそ漫画』を忘れていた!」



ジラート:「なにそれ?」



内藤爺:
「これも今や無くなったコンテンツじゃが、
漫画家の鈴木みそ先生公式サイトに漫画を載せていた時期があった」




*今は無き 『連載XIまんが』


ジラート:「どんな内容だったの?」



内藤爺:
環境準備編(3回)・予告編・本編(1回)の全5回だったはずじゃ。
環境準備編は名の通り、PS2のHDDを手に入れるにはどうしたらいいか?等の話じゃ」


プロマシア:「そんなもの、お店で買えばいいじゃないの」



内藤爺:
「お前達のように若いモンは知らないじゃろうが、当時PS2のHDDは店頭で売っていなかった。
PlayOnline協賛プロバイダから買うしかなかったのじゃ。
ということは協賛外のプロバイダに入っていると手に入らなかった


ジラート:
「なんでそんな面倒なことを?」


内藤爺:
「当時はHDDをまともに使うソフトなんてイレブンさんくらいじゃったからのう。
また生産数が少なすぎて、各地でHDD争奪バトルが繰り広げられたんじゃ。
アレは今思い出しても恐ろしいわい。プレイしたくても発売日にHDDが手に入らない人間が
続出した
んじゃ」


プロマシア:
「結果的に良かったんじゃないの。
イレブン母さんの誕生日は阿鼻叫喚だったらしいし」


内藤爺:「ま、まぁ・・・よかったんだか悪かったんだか・・・・・・」




ジラート:「それで、残りのみそ漫画は?」



内藤爺:
「予告編もまた文字通り予告編じゃ。『希望に満ちたオンラインの世界へ!乞うご期待!』
・・・のような感じじゃった」


ジラート:「それで、第一回はどんな話だったの!?」


内藤爺:
「予告編が公開されたのはサービス開始2ヵ月後の7月12日。
予告編自体が既に遅いんじゃが、暫く音沙汰がなく・・・公開されたのはさらに2ヵ月後の9月9日じゃった。
サービス開始から約4ヶ月かかったんじゃな。
もう誰もが漫画のことなど忘れておった。


しかし・・・内容はほとんど愚痴じゃったな。ほとんど・・・というと語弊があるかもしれないが
愚痴が一番目立ったんじゃ」


ジラート:「ぐ、愚痴って・・・・・・」



内藤爺:
「どうやら家庭事情で満足に出来なかったのが大きかったようじゃ。
ま、勿論それだけじゃないんじゃが。
栄えある第一回の題名が『友だちはいますか?』だからのう・・・・・・」



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-内藤爺さんの古文書-

■みそ漫画(ライブガ)No.01「友だちはいますか?」2002年9月9日更新 : 解説



1ページ目:
『あなたはもう繋がってますか?無限のオンラインワールドを』とかなんとか

2〜4ページ目:
釣りをしている。そこへ複数のモンスターに追っかけられている冒険者が。
電車が繋がっているみたいだから『トレイン』と言うんですよ、といって見て見ぬフリ。

5ページ目:
6月下旬に始まるはずだった漫画が9月に延びたので
SQUAREの編集者から小言。

6−7ページ目:
倉庫キャラを作って貿易すると儲かる、と言う話。
『発売日は大変でしたね』と聞くと、先の編集者が『その話はしないで下さい。寿命が縮みます』
と返す。

(3日連続徹夜だったそうで)


8ページ目:
みそ氏のキャラのレベルが最近上がっていない。
プレイを子供に邪魔されるので、連続した時間が取れずに
フレンドと開くレベル差。『大人はいろいろといそがしいんだよーーー!』と叫ぶ。

9ページ目:
『子供が泣いているので数分抜けます』と言うとPTメンが引く。
それを嘆く。

10ページ目:
現在辛いジョブは『シーフ・獣使い・吟遊詩人』
狩人は銃の解禁により大人気に。
(実際、狩人の人気が出るのはもっと後。詩人はこの直後にバラードによって頂点に)

11ページ目:
ジョブバランスはバージョンアップによってすぐ変えられる。
『同時にバグ取りも出来ますしね』という厳しいツッコミが。

12ページ目:
スタッフに『Lv30くらいになるまで上げましょう!』と言われるも
『冬までにはね・・・・・・』という暗い返事を返す。


『漫画の断片はここで見れます』

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プロマシア:「これが製品版PlayOnlineで見れた最初で最後の漫画なのね・・・」



内藤爺:
「この後、鈴木みそ氏は契約を打ち切ったので(打ち切られた?)No.2が出る事は永遠に無かった。
予告編とNo.1はそのまま放っておかれたが、2003年の夏・・・頃かのう?
公式サイトとPlayOnlineから密かに、しかし確実に抹消されたんじゃ」


プロマシア:「イレブン母さんも『アレはプラスにならない漫画だったわね』と言ってたわ」


内藤爺:
「そうさなぁ・・・。だがワシら語り部は語り継がねばならんのじゃ。
幸福も悲劇も全てな・・・」


プロマシア:「でも、今まではほとんどが悲劇だったじゃない」



ジラート・内藤爺:・・・・・・。


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内藤爺:
「これらの悲劇は合併への布石となった。
ENIXはコンテンツ強化を、SQUAREはマネージメントと流通力を求め、
連合軍を結成し、この終わりなき不況と戦う盟約を結んだのじゃ」


内藤爺:
「しかしもう昔の話じゃ。若い者が気にかける事ではない。
語り部の伝承として残っておればよい。

塵と消えたPS2のPlayOnline構想も、PS3ではまた状況が変わってくるじゃろう」


内藤爺:
「さ、悲しい話はこの辺にして、イレブンさんのあの時の姿でも見てみるとするかの?」



ジラートプロマシア:「うん!」



内藤爺:
「次のはきっと、アレとしては今まで他のどの語り部達もやらなかったスケールになるはずじゃ!
言うなれば・・・・・・『世界初』じゃな!フォッフォッフォッフォ!!」



プロマシア:「(またお爺ちゃんの誇大妄想がはじまったわ・・・・・・)」


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参考:
FFX 日本語版 添付ディスク
Internet Archive


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第3部
今は無き物たち



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