【第3章 「FFXIのこれまでとこれから」 序】

ここからは話題を変えて「FF11のこれから」を皆さまと考えてみましょう。まず、最初に話題にすべきは一番大きな話題・・・

「なぜ、FF11はサービス終了することなく継続できたのか。」

FF11の歴史を振り返っていきましょう。

ハード ソフト 北米版 仏・独語
対応
サーバ数
2002年 PS2開始
Windows開始
Ver 1.0 25
2003年 ジラート サービス
開始
30
2004年 プロマシア 32
2005年
2006年 PS2
Windows
XBOX360開始
アトルガン
2007年 アルタナ サポート
開始
2008年
2009年 DLC3作
2010年 アビセア3作
2011年 24
2012年 16
2013年 アドゥリン
2014年 サポート
終了
2015年 星唄 -
2016年 PS2終了
XBOX360終了
Windows
-
2017年 -
2018年 -
2019年 -
2020年 エンブリオ -
2021年 -
2022年 -

青は規模の拡大、黄色は縮小を示しています。

FF11は2002年から2年後のプロマシアでピークを迎え、5周年の2007年頃までは拡大路線が続きましたが、

※5周年イベント

旧FF14の開始にあたる2011年前後から2016年頃にかけて反転し、急速に規模が縮小していきました。

※ヴァナフェス2010(旧FF14αテスター発表)

これはいったい何が起こっていたのでしょうか?今回、マイケルサイトは様々な資料を元に「FF11の課金登録者と、FF11の売上高の推計」を作成してみました。その結果は以下の通りです。(推計のため話半分で見てくださいね!)






課金登録者(人)(※7) 売上高(億)(※7) 数値の根拠
2002年 100,000 41 IR情報(※1)
2003年 200,000 89 IR情報(※1)
2004年 550,000 138 IR情報(※1)
2005年 540,000 157 IR情報(※2)
2006年 530,000 137 2004・2008年IR情報から推測
2007年 520,000 121 2004・2008年IR情報から推測
2008年 500,000 106 公式情報(※3)
2009年 390,000 82 2012年IR情報から推測(※4)
2010年 390,000 82 2012年IR情報から推測(※4)
2011年 280,000 59 2012年IR情報から推測(※4)
2012年 150,000 32 2013年IR情報から推測(※5)
2013年 116,000 22 同時接続数情報から推測(※6)
2014年 73,000 14 同時接続数情報から推測(※6)
2015年 52,000 10 同時接続数情報から推測(※6)
2016年 38,000 8 同時接続数情報から推測(※6)
2017年 41,000 9 同時接続数情報から推測(※6)
2017年 41,000 9 同時接続数情報から推測(※6)
2018年 44,000 10 同時接続数情報から推測(※6)
2019年 45,000 10 同時接続数情報から推測(※6)
2020年 46,000 10 同時接続数情報から推測(※6)
2021年 58,000 13 同時接続数情報から推測(※6)

(※1)2013年3月期第2四半期決算説明会資料より作成。

(※2)2006年3月期中間決算「オンラインゲーム事業の「ファイナルファンタジーXI」の勢いはあまり変わっておりませんが、今後、XBOX360 向けに提供する予定があり、ここで会員数が増えてくる期待があります。」という発言から、ほぼ横ばいで推移したと推測。

(※3) 第8回ヴァナ・ディール国勢調査「有効会員数50万人という規模を維持し、依然として活発な成長を続けています。 」

(※4) 2012年3月期のIR資料の「MMOの売上高」から推定。

(※5) 2013年3月期のIR資料の「MMOの売上高」からDQ10関連の売上(推測値)を引いた値。

(※6) 「参考資料」ピークの課金登録者55万人から同時接続のピーク同時接続数19万から、課金登録者は同時接続数の2.9倍と想定し課金登録者を推測。

(※7)「売上」は2002‐2008まではIRの「オンラインゲーム」分野から。FF11以外も含まれるが、多くががFF11で占めてられていたことを考慮。なお、業績が悪化した2009年以降からオンラインゲーム区分がゲーム事業と合わさっているため、他の資料からの推測となる。2013以降は同時接続者数からの推測。2013-2015年は客単価を1,600円、有償ワードローブが加わった2016年以降は1,800円で推測。課金登録者は売上高からの比率で推定している箇所あり。また、本資料は年単位、IRは年度単位なのでかみ合わない部分がありますが、大目に見てください。


こんな感じのグラフは見たことが無かったので、探すのも面倒だし自分で作ってしまったのですが、興味深いものとなりました。

■2004年の「プロマシアの呪縛」が課金登録者のピーク(55万)で、以降頭打ちしていたが、2008年までは高評価だった「アトルガン」「アルタナ」が下支え(50万まで減少したものの)していた。

「プロマシアの呪縛」が課金登録者のピークだったという話は有名ですね。ただプロマシア単体で急速に減少した・・・とまではいきませんでした。XBOX360版のリリースで課金登録者数が伸びるのではないかという期待がありましたが、実際は引退者と相殺されて、伸び悩んだ、というのが正確なところのようです。



■2009年頃から課金登録者数が急落した。

2009年からガクッと下がっています。これの原因は複数考えられます。

・旧FF14が正式発表された。

スクウェア・エニックスのMMOの先駆者であったFF11ですが、旧FF14が2009年6月のE3の正式発表され、その役割を譲ることになります。プレーヤーもこの時「FF11は今後主力ではなくなり、FF14に移行していく」と認識するようになりました。

・次世代機(PS3)に本格的に移行が始まった。

PS2世代で頑張ってきたFF11ですが、2006年に発売されたPS3の普及が一定程度進み、FF13が2009年12月にリリースされました。PS2世代がレガシーとなりつつありました。

・アルタナが一服した。

アルタナは2007年11月に発売されましたが、1年以上経ち、発売当初の勢いは落ち着いてきた状況でした。


売上のピークが過ぎたFF11は、開発リソースが絞られていくことになり、結果として
「大規模な追加ディスクがリリースされない(新規要素、ストーリー更新が鈍化)」
「根幹に関わる方針見直し(アビセア乱獲に関連した、Lv上げ大幅緩和とその影響)」
の変更が加わり、プレーヤーからの賛否両論の末、急速に課金登録者数が減っていくことになりました。

※サーバ統合の歴史

売上高が急降下する中、まずユーザーの目につきやすい部分で打たれたコストダウン施策は、2年連続の大規模サーバ統合でした。2009年頃の急落からたった2年で、サーバ数はピークから半減し、16サーバに減りました。

この時のサーバ統合にはいくつかメッセージが寄せられました。


名無し さん(男性):引退

「初期からの登録だったのにサーバー統合時に名前の変更が必要になったのは納得できない。それがなければ今も続けていたかも知れない。」


Yamyam さん(女性):引退

「個人的な出来事ですと同LSの人と2004年に結婚したことが最大の出来事です。子は高校生になりました。
11内ではアビセアの登場でプレイヤー間の雰囲気ががらっと変わったこと、ずっと住んでいたKujataが併合されて改名することになったのが自分には影響が大きかったです。」


名無し さん(女性)休止

「サーバ合併により、ずっと使っていた名前を変えるのがつらかったです。元の名前に戻せる機会があったらいいなと思います。」


名無し さん(男性)休止

「FF11がきっかけで、交友関係が広がった。フレンドとリアルでもよく遊ぶようになり、家族ぐるみの付き合いになったり、別サーバーで昔FF11をやっていた人と偶然出会って意気投合して結婚したり。今ではたまにプレイするくらいだが、ヴァナディールは第2の故郷となっている。
FF11には感謝も多いが、唯一残念だったのはサーバー統合の際に名前が引き継げず辞めていった人が多かったこと。あのときもっと上手くできなかったのか…。また当時の仲間たちと遊ぶことができたら、と思う。」



※自分の意思ではないサーバ統合だったため、コストダウンによるFF11存続のためとはいえ、不満が噴出したのはやむ負えない結果だと思います。幸いにして自分のサーバは統合される側ではなかったですが、ある日、自分のサイト名を「マイケルサイト」から、もう別のやつが使ってるので「ナイケルサイト」にでもしてくれと言われたら・・・気持ちはわかります。

ちなみに後続のMMOでは設計で考慮されており、DQ10は元々キャラ名が被りやすい(6文字まで)のため、最初から「キャラクターID」も付与されています。ソシャゲ方式ですね。
FF14ではキャラクターIDはありませんので、名前が被ると変更が必要です。その代わり姓・名が付与できるので、FF11よりは被りにくくなっています。システムの根幹の設計だけに、初期の設計で入っていないと後付けは難易度が高そうです・・・。


■2013年頃(アドゥリン発売直後)に、FF11が終息に向かうことが一度は確定した

旧FF14のリリース遅れと品質問題により、急速に収縮していたスクウェア・エニックスのMMO事業は、2012年のDQ10のサービス開始、新生FF14の急激な立ち上がりが起死回生の一打となり、V字回復しました。

ですが、FF11は「アドゥリン」はかつての「アトルガン」「アルタナ」の状況とは異なり、課金者を維持できる起死回生の一手とはならず、課金者の減少はさらに進んでいきました。

※先のアンケート結果より

この時期、今年20周年を迎える「信長の野望」は既に最新のPS3に移植されていましたが、FF11は「同じFFシリーズのメインタイトル」が後継に存在していたため、最先端の道はFF14に譲ることになります。

We are vana'diel 「プロデューサーセッション -WE DISCUSS VANA’DIEL- 第3回 川又 豊 パート4」より

しかし、このペースで減少が進むと、コスト削減を図ったとしても2017、2018年頃には赤字に転じ、運営ができなくなるような曲線を描いていました。最盛期には50%近い、とてつもない利益率を誇っていたFF11が、です。

2019年のインタビューより

おそらく様々な方策を考えられたのだと思います。(当時の様子がわかるインタビュー)

結果として、FF11本体を「エンディング」に導く「ヴァナ・ディールプロジェクト」の発表となりました。

仮にFF11を終わらせるとなると、最低3か月前の告知が必要になります(最新の利用規約では明記されていないが、当時のパッケージに記載があります)。
実際に、PS2・XBOX360のサービス終了告知は6か月前に行われ、終了は2016年3月31日でした。2016年以降もユーザー数が減り続け、FF11本体を終わらせるとなると、最短で2016年中のサービス終了の発表。つまり2017年中、FF11の15周年に終わる可能性もあった・・・・・・と言えるでしょう。

ところが蓋を開けてみると、惜しまれつつ15周年で力尽きる「黒き未来」には進まず、待っていたのは、20周年を迎えることができる「白き未来」でした。


■「FF11が20周年を迎えられたわけ」

文字通り大気圏に突入しつつあったFF11は、ワールド統合に加え、身軽になるため次々に切り離しを行いました。

・開発体制変更(メジャーバージョンアップの切捨て)→(のちにバージョンアップについては事実上の撤回)
・PS2、XBOX360版のサービス終了
・フランス語版、ドイツ語版の提供終了

結果としてこれらのコストダウン策が功を奏したこと、それだけではなく、アツい現行プレーヤーの支持に加え

※多数のプレーヤーが星唄で復帰し、そのまま継続した

ヴァナディールの星唄(エンディング実装)というショック療法で復帰した多くのプレーヤーたち、開発の戦線維持(継続的なシステム改修と、早い段階で導入し、主要エンドコンテンツとして育った「アンバスケード」「オーメン」「デュナミスダイバージェンス」の実装)、が一体となり、課金ユーザ数はなんとか下げ止まり、今日まで継続できたということになります。


ではここで、FF11は今後どこまで頑張れるのか?を占ってみましょう。
もちろん「占い」なので話半分に・・・。(管)はコルセアのレベルが18とかだったんで、当たるも八卦当たらぬも八卦・・・・・・。

今回の考察にあたり、体制変更前最後のスタッフロール「星唄エンディング」で流れる スタッフロールを文字起こし(参考)して、体制がどれくらいの規模か確認してみました。(変態かよ・・・)

すると、星唄の時点でFF11本体の日本版にかかわる根幹の開発スタッフは、およそ60数名であったことがわかりました。

あのスタッフロール非常ーーーに長く感動的なのですが、見てみるとほとんどは海外スタッフや他のディヴィジョンのメンバー、オペレーターなどで、 星唄までに終了していたフランス語版、ドイツ語版のメンバーなども含まれています。


※以下は見なくていいです。

皮算用の詳細を開く

開発チームがどれほど縮小したかについては語られていませんので、運営にかかるコストを見積もるのは難しいですが、仮に現在の体制を兼務などを含めてざっくり以下のように仮定したとして

・開発:人月150万×5名(専任)+120万×10名(専任)+50万×30名(兼務)(開発、広報、QA、維持保守など)
・オペレーション:400万/月(日米GM等の運用)
→人件費 4,000万/月

・ハードウェア等の償却費
→1,000万/月(ピークに近いアルタナ時点の償却費が年3.75億 → 3,125万/月なので、いまは1/3くらいを想定)

・償却費以外の費用(ハウジングとか回線利用料とかサポートとか)
16ワールドで1ワールド20サーバくらいだと300台くらい?ストレージとかNW含めて20ラックくらいかなとすると、ハウジングで400万、10Gの専用線引いても数百万なので、300万などとして、もろもろ外注費用込みでえんぴつ舐め太郎で合計1,000万/月




推定製造原価:6,000万/月 → 7.2億/年

現在の推定売上高:13億/年(前出) →粗利40% 利益率30%くらい? 

 

お・・・結構いけてるのでは・・・?最近の運営から大変そうだけど悲観的な感じがしないのは、これではないでしょうか。
売上こそピークの10分の1以下になってしまいましたが、これくらいの利益率があるとすればまだまだ続きそうな気がします!

なので、普段のログイン数が現状から常に3-4割減ってしまうような状況が続くと、いよいよアルタナ神に祈ることになると思います。いまのところ当面はなさそうです。


(余談)昔ですが、5年前くらいに開発者の方(FF11関連ではない)に雑談で「FF11ってどこまで続けられるんでしょうねえ」と聞いたら 「利益率のいい事業はそう簡単に手を引かないでしょうね」と言われたことがあり、確かにそうかもなあと思いました。今も続いているし。 (年間売上10億で利益率30%、40%の事業を新たに生み出すのは容易ではないし、売り切りではなくサービスなので安定した収益が見込まれますし。)


また、料金を値引きしなかったのも良かったと思います。例えば・・・「1キャラで¥1,408を約3割引きの¥1,000ぽっきりに!」しただけで、いきなり利益がほぼ0になります。高々、月400円安くなった程度で人がワッと戻ってくるでしょうか?もう僕らもいい大人なので、無料ならいざ知らず、その程度では・・・。

なので、松井さんのコメントの通り、昔ながらのサブスク路線を維持し安易に価格を下げないことは、いまの環境を崩さず、FF11の環境を安定的に維持できる最適な手段だと考えます。危機があるとすると、このFF11の環境を知り尽くしている開発者がいなくなり体制が維持できなくなること、が一番の問題ではないかと思います。FF11という「伝統工芸」の行く末はオススメ職人にかかっている・・・・・。


参考として、「もふもふのブログ」様がまとめられている「2021年「ラグナロクオンライン」の接続人数の推移」を見て頂くとわかりますが、あるラインから減らなくなる(微増する時もある)と、FF11と同じ傾向を示しています。

ラグナロクオンラインも、維持できているのは「月額1,500円」だからだと思います。これが無料ゲームだともうとっくにサービス終了してるでしょうね。ちなみにラグナロクオンラインも今年めでたく20周年を迎えるようです。


では、前置きが長くなりましたが、ここからは「20周年を過ぎても、まだまだ頑張れそうなFF11」に対しての、みなさんのご意見を取り上げてみました。

第3章「「FFXIのこれまでとこれから」前編」